27歳でH.company本店であるH[eitf]の店長に抜擢される。
男性からの圧倒的な支持を受け、若い層には“憧れのデザイン”・大人には”魅力を引き上げる質感”を重視した提案に定評がある。
2005年。
裏原宿の片隅に、H.companyの最初の店舗となるH[eitf]がOPEN。
開店から程なく、この美容室を訪れた彼は「この店で店長になる」と決意する。
出来たばかりの頃のH[eitf]は、スタッフこそ少なかったが、雑誌に取り上げられることが多かった。
「ここでなら、チャンスがあるかもしれない。」
サロンに入った時に感じた雰囲気。就職活動は、この1社だけとなった。
もともと、人の面倒を見るようなタイプじゃなかった。
今のやりがいは、「スタッフの面倒を見る事。」
元から人付き合いがうまく、面倒見の良いタイプなのかと思えば、そうではないらしい。
自身は末っ子であり、どちらかと言えばあまり人に興味のないタイプだった。
自分でも変わったなと思う。
社会人として働き始めた事。
後輩が出来た事。
色々な要因はあるが、「家族が出来たことが一番大きいかもしれない。」
自分自身の成功だけでなく、周りを支えながら全員でH[eitf]を盛り上げていく。
そこに面白さを見つけた。
フロアで一番目立ちたかった「アシスタント時代」
“距離感”
彼と話をする中で、何度もそのワードが出てきた。
アシスタントとして店頭に立つようになった頃、H[eitf]で過ごす時間を楽しんで欲しい一心で、とにかく喋り続けていた。
目の前のお客様はもちろん、隣や斜め後ろに座るお客様も一緒に働く仲間も”いかに笑わせるか”。
しかし、スタイリストとなりお客様を担当するようになった王子田は、違和感を抱くようになった。
美容院で過ごす時間は楽しんで欲しい。
しかしあくまで目的は「ヘアスタイルを整える事。」
たくさんのお客様と関わっていく中で、「その人がどういう変化を求めているのか」をしっかり受け取ることが大切だと気付いた。
とはいえ、お客様の求めるものが簡単にわかる方法なんて無い。
1対1の時間に、そのお客様にいかに寄り添えるか。
お客様が王子田に任せようと信頼される、居心地が良いと感じる”距離感”が必要なのだ。
それ以来心がけるようになった距離感は、お客様のみならずスタッフとの関係性にも生かされていく。
尊敬するのは切磋琢磨し合える仲間達
店長として日々の業務は多忙を極める彼が、楽しみにしている時間がある。
同志でありながら尊敬する相手でもある、他店の店長達と飲みに行く時間だ。
月に一度、この日ばかりは昼過ぎから集合し、終電までそれぞれがとにかく仕事について語る、語る。
「考え方はそれぞれ本当に違う。でも“確かに”って思える。」
自分と違う価値観をぶつけ合い、共有する。
「こいつらすげぇって心から思う。」「頑張らないと」と高まる気持ちを抑えながら帰路につく。
その熱い気持ちを持ち帰り、また次の日からの仕事に勤しむのだ。
「スタイリストもアシスタントも全員が活躍できる美容院を作りたい。」
美容師に限らず、仕事の評価は大概”数字”で測られる。
出来る・出来ないが明確に出てしまう。
店長として店舗やスタッフのマネジメントも担う彼にとって、数字の問題はシビアだ。
一方で、「人の良い所は数字では表せない」という想いもある。
だからこそ「個々の良い所を見つけて・伸ばす為にはどうするべきか」を考えるのだという。
関わるスタッフが10人いれば、10通りの接し方があり、成長の速度もそれぞれ違う。
スタッフ1人1人がしっかりと仕事をして、数字を伸ばせるようにする。
それが、本人の仕事の楽しさに直結する。
少なくとも、そこに到達するまで支えることが、店長としてやらなければならない事なのだと語る。
「もし、自分の子供が美容師になりたいと言ったら?」
プライベートでは2人の子供の父でもある彼に、こんな質問を投げてみた。
「“根性があるなら”応援する。」少し苦い顔で答えた。
一般企業と比べたら、安定しにくい職業。
根性とやる気が無くなったら、全てが崩れてしまいかねない世界。
その厳しさは一番よく知っている。
それでも。
-もし、やってくれたら嬉しいですけどね-
それまでと少し違う笑顔で話す彼の表情に、これまでの美容師人生への誇りを垣間見た。
1987年生まれ / 美容師歴10年 / 東京都出身 / 国際文化理容美容専門学校国分寺校卒
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