都内有名店にて学生時代から美容師・ヘアメイクとしてのキャリアをスタートし、25歳でH.companyに入社。
ROJITHAでの勤務を経て、渋谷Sienaのオープンに携わる。
モデルや業界人の顧客を多く持ち、2018年7月の売り上げランキングでは1位を獲得する。
「お客様」が「大好きな友達」になる
「人とのつながりとか、知り合いにめちゃめちゃ恵まれていると思うんですよ。」
15歳で本格的にDJをはじめた。
一人のプレイヤーから知り合いの誘いでイベントを主催するようになり、いつしか大きな利益を出すようになっていた。
家にいることはほとんどない。
たくさんの出会いに身を投じてきたそのすべてが、今につながっている。
“無類のファッション好き”
高校生の時にはすでにハイブランドに身を包み、とにかく派手だった。
その頃から自身のヘアスタイルを任せていたのが現在のオーナーである塩澤だった。
美容業界に進んだ理由はファッションとのつながりが大きい世界だったから。
「イベントをやっていた時に、DJだけというより運営側にたった方が案外うまくできて。一番好きなこととちょっと離れて、状況を見ながら円滑に回すという方が得意なのかなと思ったんです。」
そうして進んだ美容業界。
専門学生時代からアシスタントとしてヘアメイクの仕事を始め、学びに遊びにとめまぐるしい日々だった。
人と接する時に、あえて遠い距離感を作るのが好きではない。
「一定の距離感がある方が大人としては楽なんですけど、お客様は大好きな友達になっちゃう。だってそんなに仲良くない人と2時間過ごすのって、大変じゃないですか。」
お客様がサロンで過ごす時間は短くない。
指名客からは「おまかせで」とオーダーされることの多い彼にとって、最大限のおもてなしをするためには友達くらいの距離感と信頼度が必須なのだという。
「友達って褒めてくれるだけではないから本音で接するし、2回目以降はダメ出しもしますよ。期間が空けばカラーは色落ちする、今綺麗じゃないよっていうことはストレートに伝えます。だから今から綺麗にしようって。自分自身と向き合わせてあげることが大事だと思うんです。」
大切なのは、相手の“承認欲求を満たす”ということ。
「今の若い子たちは基本的に承認欲求が強いと思っていて、そこを満たすことで心を開いてくれる。初めてだと話をしたがらない方もいらっしゃいますけど、そういう方たちこそ僕はどんどんハッピーに話しかけます。」
顧客にモデルや業界人を多くかかえ、そのファンが来ることも多いという彼だが、誰に対しても同じ対応を心掛ける。
大好きな友達を綺麗にする、日々の仕事に対する目標はシンプルだ。
人間力が高い美容師を育てる
「物が落ちた時に拾ってあげることは誰にでもできる。だったら、落ちない場所に置くというのが本来の優しさだというくらいのことを気づかせないと。」
後輩指導にあたっては、何よりも人間力を高めるという部分に注力する。
「自分を好きになれる仕事はたくさんあるのかもしれないけど、美容師は人を好きになれる仕事。こういう商売はなかなか無いし、難しいと思う。豊かな心がないと対応できない職業だと思うんですよね。」
彼が思う人間力は、柔軟に対応する力や、興味を持てる力。
「時代に忠実な人間が一番売れるし、かっこいいし、アンテナを張っている人が一番えらい。そう思っているので、柔軟に取り入れて自分に落とし込む力は必要だし、何よりも他人に興味を持てる人であってほしいんです。」
人に興味を持つことは、実は難しい。
時には好きになるために、その人を研究しなければいけないかもしれない。
でもその積み重ねが、人間力につながるのだと話す。
彼が後輩たちへの指導として実践していることのひとつに “読書感想文”がある。
「言葉のレパートリーや話題の引き出しが少ないことがすごく気になるんです。読解力と語彙力を鍛えるという面でも、本は読んだ方がいいと思う。」
月に1冊、課題図書を自分で買い、読んだ後に感想文を提出してもらう。
「本を読むことで日常に使う言葉が変わってくる。感想文を書いてもらうのは、取り入れた情報を落とし込む能力をつけてもらいたいから。それができると、美容師としての技術習得のスピードも上がってくる。そういう自分のフィルターを通せる力を作ってもらいたいんです。」
目指すのはセルフプロデュース力を高めること。
「こうなりたい」と思う姿は見えているのに、そこにたどり着くための目次を作れずに迷う。
そういう子が多いからこそ、目標は数多く箇条書きで作り、それに対しての指導をするという繰り返し。
“見ていてもらえる”という安心感が、後輩たちの承認欲求を満たすのだという。
自身のアシスタント時代は、厳しく辛いものだった。
それでもこのやり方に行き着いた理由は「それが今の時代だから」ということに他ならない。
人に恵まれていることを、さらなる武器に
尊敬する人にオーナーの塩澤を挙げたのは、「誰よりもハッピーで人間力が高い」からだと言う。
「Sienaがオープンしてもうすぐ2年。塩澤さんにとって“自分のお客さん”だった僕が、自分のお店のスタッフになって、だんだん売り上げが良くなってランキングで1位をとれた。その軌跡が好きだ、みたいな話をしてくれたんです。その姿を見ているのが嬉しくて、僕はこの人が好きだなと改めて思ったし、二番手肌なんだろうなと思ったんですよね。」
出会った時から変わらない、そんな彼と目指したいものはたくさんある。
「やりたいことはたくさんあるんです。美容師だけではなくて、“ものをつくる”という発想を柔軟に持てる人たちが集まれるLaboのような場所をつくりたい。」
人に恵まれている人生だから、人と人をつなげられるような、そんな仕事をしていきたい。
「自分に自信があって自分のことを好きな人と一緒に仕事をしていきたいですね。」
彼から広がるハッピー感は、さらなるハッピーを呼ぶ。
その熱量は、これからも多くの笑顔を生み出し続ける。
1992年生まれ / 美容師歴8年 / 大阪府出身 / 国際文化理容美容専門学校渋谷校卒
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