都内有名サロンにてアシスタントを経験後、アパレルデザイナーの仕事を経てH[eitf]に入社。
音楽関係や芸能関係の顧客を数多く担当する。
毎月必ずフェスに行くほどの音楽好きで、過去にはiTunesへの課金が年間で60万円を超えたことも。
スタッフとは仕事だけでなく、プライベートで過ごす時間も大切にしている。
これまでの人生の分岐点には、いつも支えてくれる人がいた。
大学進学を諦め、専門学校に入学した時も。
美容師という仕事を一度は辞めてしまった時も。
Goroというあだ名は、美容専門学校で出会った親友がつけてくれた。
「18歳くらいから呼ばれているから、そろそろ本名で呼ばれていた期間を越しますよね(笑)」
本名は米澤賢吾。
芸能人に似ているとつけられたそのあだ名は、現在もスタイリスト名として使い続けている。
「王子田さん(H[eitf]店長)も専門学校が一緒で仲がいいんです。一緒に働くようになったら彼がGoroって呼ぶじゃないですか。そうしたら他のスタッフもお客様も同じように呼ぶようになって。スタイリストデビューの時に本名に戻そうかと思ったんですけど、今更誰だよってなるからそのまま使っています(笑)」
彼が居てくれなかったら、今の自分はいないかもしれない。
今もH[eitf]で美容師として立ち続けているその影には、どこまでも諦めずに背中を押してくれる存在が居る。
美容師だけはどうしても辞められなかった
子供の頃の夢は、弁護士か教師。
高校は県内で三本指に入る進学校の特進クラスに入り、大学受験を目指していた。
ところが、高校時代のちょっとしたきっかけで、大きく進路を変えてしまった。
「今思えば大した挫折でもないんですけどね。専門に入ったはいいけど誰とも話したくなくて、休み時間は机に突っ伏して寝ていました。」
そんな時に声をかけてきてくれたのが、今の親友だった。
卒業後も毎日のように連絡を取り、それぞれがスタイリストを目指して切磋琢磨する日々。
しかし新卒で働き始めたサロンに馴染めず、スタイリストになる前に心が折れてしまった。
「アシスタントは僕だけ。営業中は喋らずに立っているだけの毎日で、レッスンもシャンプーだけを3年間続けました。結構辛くて、カットの練習に入る手前で辞めてしまいました」
お客様として来ていたアパレルデザイナーから声をかけられ、事務所に遊びに行くうちに洋服のデザインを手伝うようになった。
「洋服も好きだから、こっちを本業にしようって本格的にデザインをするようになって。すごく楽しかったんですけど、なんで美容師辞めちゃったんだろうって後悔がすごく大きかった。気まずくて親友に辞めたことを言えなかったし…。結局その時ルームシェアしていた友達がチクりまして(笑)、突然部屋に来たと思ったらものすごく怒られたんですよね。でもそのおかげで、また美容師に戻ろうと思えた」
シーズンの仕事をやりきり、アパレル業を退職。
すでにH[eitf]で働いていた王子田の紹介によって、一週間の中途採用試験を受けた。
アットホームなH[eitf]の雰囲気に最初は驚きつつも、徐々に本来の自分を取り戻し、ありのままで働くことができるようになった。
結果は採用。
そこから7年、ここで働く日々は楽しい、それに尽きるという。
遊ぶように働いて夢を叶える
普段会わない人だからこそ、お客様は美容師に他では言えないことをつい話してしまうことがよくあるという。
このほどよい距離感を保ちたいと思えば、表面を撫でるだけ会話をするのはもったいない。
お客様にとって、できる限り“近い人“でありたい。
「美容師として僕が髪を切って何か変えてあげよう!みたいなことってあまり思わなくて…美容が関係なくても、何かすごく悩んでいる人がいた時に、僕が話しを聞くことで前向きになってくれたらそれだけで嬉しい」
自分も、これまで誰かがいてくれたことで救われた経験がたくさんあったからこそ、強く思う。
「そもそも僕だけじゃ何もできないと思っていて、誰かがいて僕がいるから成立する、そういう風にしたいんですよね」
自分のことを“他力本願”だと話す。
それがマイナスに聞こえないのが、この人のすごいところなのだと思う。
「僕ね、尊敬する人がいっぱい居て。交友関係は濃く深くだと思いますけど、そうやって付き合っている人は皆、僕にないものを持っている人達なんです。そういう人と話すことがきっかけで、夢も叶っていると思う」
音楽好きな彼の夢は、舞台のバックステージからアーティストと同じ景色を見ること。
ヘアメイクとしてなら、チャンスがあるかもしれない。
お客様との会話の中でその話をしたところ、そこからとんとん拍子に話がすすみ、SUMMER SONICにヘアメイクとしての参加が決まった。
系列店のオーナーに『AIR JAM』のスタッフの仕事を紹介されたこともある。
最近では、知人の誕生日会で好きなバンドのメンバーと出会い、どれだけ好きかを本人にアピールした結果、交流を持つことができるようになった。
「口に出していなければ、チャンスがあったとしても過ぎ去っていくだけ。伝えるから実現するんですよね。よかったなぁ、こんな人生って今は思えています」
これからの新しいH[eitf]
「歴代の店長はみんなしっかりしていたから、もし僕がこのまま店を率いるようになったら、今までにないタイプの人間が上に立つことになりますよね(笑)」
そう遠くない未来、店を率いていく立場へ。
変化の時は来る。
「しっかりしなきゃなって思ってはいるんですけど…」
そんな彼にH.company社長の小玉からのアドバイスは意外なものだった。
『お前が厳しいことを言う人間になってしまったり、体育会系のノリで売り上げのないスタイリストに休み返上で働け!なんて言っても、ほぼ伝わらないんだから。だから変わろうとしなくていい』
これまでの店長のようにならなくてもいいから自分らしく、そんなメッセージだったのだろう。
そんな彼がいま思う、これからのH[eitf]とは?
「H[eitf]の特徴って誰に聞いてもアットホームさだと思うんですけど、ここ数年で会社やお店が大きく広くなったことで、少し薄れてしまっている気がするんですよね。それをもう一度、取り戻したい」
ここで働くスタッフは、いい意味での“人たらし”であってほしい。
人から好かれる人は、きっとそういう人が多い。
そうしたら、もっと愛されるサロンになり、自然と売上も伸びると考える。
「そのためにも、人と人をつなげていきたいっていうのが僕の希望であり、出来ることですね。厳しいことを言ってくれるスタッフもいるし、そこは任せながら(笑)。それぞれが楽しくなるようなモチベーションにしてあげて仕事をした方が、楽しいし、作業じゃなくなるかなって思うんです」
それぞれのスタッフの得意なものを補い合いながら、また新しいH[eitf]を創っていく。
「あとは…そうだな、夢というのが正しいのかはわからないけど、親孝行したいですね」
もしかしたら、また苦難を迎えるかもしれない。
でも、失敗しても失望しても、彼ならきっとまた助けてくれる人がいる。
弱さを見せられること、人を頼れること。
それもひとつのリーダー像として、必要なことなのかもしれないと感じた。
1988年生まれ / 勤続年数7年 / 静岡県出身 / 国際文化理容美容専門学校国分寺校卒
instagram : @goro_0560