原宿 H[eitf]では、2020年8月よりTopStylistの阿部達哉が店長に就任いたしました。
TopStylistとして、H[eitf]を引っ張ってきたエースが、リーダーとなる。就任に至る経緯や、生活様式の変わるこれからの時代に目指していきたい美容師像について、聞きました。
H.companyの本店として、これから目指していくサロンの姿とは。
ステップアップを応援し、引き継いでいく
― 今回、店長に就任されたその経緯は、どのようなものでしたか?
前店長のGOROさんが、人生のステップアップのために新しいお店に行くことが決まったので、それまでサブとして一緒にやってきた自分が「引継ぎます」とこの形になりました。
― 就任から2ヵ月、TopStylistと店長で、役割の違いなどは感じますか?
かなり違いますね。
TopStylistはとにかく売上で仕事を見せていくことが仕事でしたが、店長には「この人がいれば大丈夫だ」という安心感や、「仕事は仕事、遊ぶときは遊ぶ」のメリハリをつける力が必要なんだと感じています。
あとは、スタッフを生かす力。数字をとる人間・ムードメーカー、スタッフそれぞれの強みを見いだして、場を作る力が必要だなと。自分の立場によって、こんな風にお店の見え方が変わるものなのかと、驚いています。
― 小玉社長や歴代の店長が、知らず知らずのうちに築いてくれていた部分ですね。
皆さん本当にすごくて、受け継がれてきた歴史の重みを感じます。そして、その原点をつくった小玉社長は、やっぱり憧れますね。サロンを見るきめ細やかさが、桁違い。
たとえば何か荷物が届いて、一時的にカウンターの裏に置いたとしますよね。表から少し段ボールが見えていたとしても、「一時的に置いているだけ」とそのままにしてしまうこともあったんですけど、小玉さんからすれば「お客さまが入ってきて、すぐ目に付くよね?」と、絶対にNGなんです。細かいところから、徹底してお客さま目線。受付や電話対応のあたたかく迎え入れる姿勢や言葉は、本当に勉強になります。
ここからは、この徹底的なお客さま目線とお客さま対応に、さらに力を入れていこうと思っています。
― サロンとして「受付や電話対応」に注力するのは、なぜなんですか?
サロンに行く時って、少なからず緊張しませんか? その緊張をほぐせるのって、予約の電話や入店した時の、本当に入り口の部分での対応だと思うんです。
お客様がサロンに入った瞬間から「大事にされている」と感じてもらえるように、「チームとして」「差がなく」お迎えしたい。それが出来てやっと、その先の技術や接客を見てもらえるんです。
― 「仲がいいお客さま」と「はじめまして」ではどうしても温度差が出てしまうものかと思いますが、そこをフラットにするということですね。
人間なので、個人差は出ます。でも、それを極力フラットにしていく感じですね。
僕自身、宮城から初めてこのサロンにきた時は、衝撃でしたからね。「原宿の人気サロンなのに、すごくあたたかい!」って、一瞬で好きになった。
働く人が変われば、お店の雰囲気が変わるのは当たり前のことで、でも、僕たちは常にチームとして動くんです。チームだからこそ提供できる価値に、立ち返りたいと思います。今も悪くはない。でも、もっとできることがあると思うから。
未曽有の事態を乗り越え、これから目指すお客さまとの絆
― コロナによる休業期間もあり、再出発という場面での店長就任。この未曾有の事態は、どのように過ごされていましたか?
「お客さまとのつながりをどう保つか」を、すごく考えた時期でした。SNSでスタイリング動画やLIVE配信、オンラインで一対一の講習会など、思いつく限り、新しいことにチャレンジしましたね。
自粛明けに「またH[eirf]に来たい」と思ってもらえるか。発信の軸は、そこでした。
― SNS全盛期、美容師さんもサロンでの営業以外に発信することを求められがちですが、H[eitf]では何か教育はされているんでしょうか?
8月に武田響というスタイリストが入社して、この子がフォロワー数が多く、SNSに関する知見を持っている子なんですね。ちょうど先月から講習会をはじめて、ようやく、サロンとしてSNSの教育に、本腰を入れ始めました。サロンとして「こういう発信をしよう」と強制することはなく、それぞれが工夫して発信するおかげで、個性が見えるようになってきました。
― 阿部さんのSNS運用の方針は、どのようなものですか?
今は、「どれだけ深くつながれるか」を、考えています。全く知らない人たちに向けての発信ではなく、お客さまの延長線上に向けるというか。
施術後の笑顔の写真をのせることで、ご自身のアカウントでもリポストしてくださるので、そこから、そのご友人やご家族などに知ってもらうイメージ。「こんな風に笑顔になれるなら、このお店に行ってみたい」って感じてもらえたらいいなとはじめました。
美容師のアカウントには、「美容師のタメになるアカウント」や、「自分のお客さまがみてくれるアカウント」などがあると思うのですが、僕は後者ですね。比較的近い存在として、「つながれる距離にいる」アカウントにしたい。
もちろん、フォロワー数が多いことに憧れもありますが、そこは武田君にお願いして(笑)。
人とのつながりが好きでこの仕事を選んでいるので、SNSも、その距離感を保っていけたらいいなと思いますね。
― 深いつながりと、広いつながり。それぞれの強みを持ったSNS運用を近い距離で学べるのは、勉強になりそうですね。
リアルでも、SNSでも、人との深いつながりを作れたら、一生ものの財産ですよね。美容師として、H[eitf]でずっと働く道も、独立して外へ行く未来もあり得る中で、ステップアップも見据えて力を身に付けられる場所として、勉強してくれたらいい。
何より、有事の際に助けてくださるのは、深いつながりのあるお客さまだなと、改めて感じましたから。
得られるものは「美容師としてのやりがい」と、「一生ものの人脈」
― 今回のGOROさんのステップアップの話もそうですが、H[eitf]は、独立などでお店を離れた方とも、皆さんすごく仲がいいですよね。
めちゃめちゃ仲が良いです。こういう関係は、聞かないですよね。お客さまだけではなく、スタッフとのつながりも、本当に財産。そこも、小玉さんのすごいところだなと思います。
― いよいよお店を率いる立場となりましたが、これからH[eirf]をどんなお店にしていきますか?
僕は本当にプレイヤー気質で、一時期はそれじゃダメだと思っていました。でも、やっぱり僕にはそれしかないんですよね。変にこれまでの店長をまねして「包み込んであげる」ようなリーダーを目指しても、多分うまくできません(笑)。
それよりも、自分がしっかり美容師の働き方を見せて、数字を見せて、それに憧れてついてきてもらうことに、注力したいと思います。自分がこれまで感じてきた「美容師としての満足度」を、後輩一人ひとりのレベルの最高値で、感じてもらいたい。
お客さまとつながって、たくさんの方に支持されてお金を稼げるって、Win-Winでしかないから。
だからこそ、これから僕が店長としてできることは、その入り口をどう整えるかというところだなと思っています。
HotPepperBeautyやSNSの発信強化、予約対応や入り口での対応力をあげることで、安心してお客さまにサロンに入ってきてもらう。
そこからやっと始まる一対一の「つながりをつくるチャンス」を、店長として万全の体制で渡していけたらいいなと思います。
― だからこそ、受付や電話対応からこだわる、と。
お客さまと一対一になったときのスタッフの人間力は、それぞれの強みがあるのでそこまで心配はしていない。
でも、そこに行き着くまでの間が大事。「レセプションには売上100万円の価値がある」とは小玉さんの言葉ですが、やっぱりレセプションがいたときは、「受付の方がすごくすてきで」って口コミをよくいただいていたんですね。緊張している中で最初に対応してくれる人がすごく丁寧だったら、安心するし、その後のカウンセリングも、心を開けますよね。
普段はできるのに、忙しいと気持ちが行き届かない時がある。その差を埋めていきたい。お店側にどんな理由があったとしても、お客さまには関係ないことですから。
H[eitf]は、いまいちど、原点へ
― コロナによって停止していた採用活動が始まりましたが、「こういう人材が欲しい」という希望はありますか?
H[eitf]はここからまた新しいお店作りが始まるので、この状態でも一緒に頑張ってくれる意思があれば、嬉しいです。よく笑う、明るい子がいいな。
― 出来上がったところに入るより、ある意味楽しいかもしれませんね。
コロナ禍を超えて、改めて、美容師の楽しさを感じました。不安もありましたけど、おかげでオンラインのつながりも増えて、大切なものがちゃんと見えた気がします。
全美容師、どんな役職でも関係なく、緊急事態になった時に守ってくれるのは、お客さまだけ。それまでの関係性が、全てです。じゃあ、これからそのつながりをどう作っていくのか?
「このスタイリストが好き」、「アシスタントが好き」、「このお店が好き」となっていただくには、日々の対応全てが大事なんです。技術だけじゃない。だからこそ、初めてこのお店に足を踏み入れた瞬間の、「はじめまして」から信頼を積み重ねていきたい。
H[eitf]がこれまで軸として持ってきた「アットホームさ」、そこにプラスされる「SNSを使った新たなつながり」。その融合を、チームとして表現したお店にできるように、頑張ります。
― 改めて、H[eift]をどんなサロンにしていきますか?
「なんのために、美容師になろうと思ったのか」
僕はH[eitf]を、そもそもの美容師の楽しさに触れられる場所にしたい。
最初はどの美容師も、「お客さまとしっかり向き合いたい」と夢を持って、働きはじめるはずなんです。アシスタントの頃にモデルハントで出会ったモデルさんが、結婚して子供が生み、その子供の髪を切って…。そんな風に人生に寄り添えることが、美容師のやりがいです。
でも、日々の忙しさや仕事への慣れで、ふと忘れてしまいがちなんですよね。だからこそ、いま一度原点に返りたい。
技術はここにいる先輩から学んでほしい。僕たちの仕事は、「ハサミでお客さまの要望を叶えること」だから。
H[eitf]をつくった小玉重太という美容師が伝えてきた技術は、「速くて上手い」です。技術が早いからこそ、外に向けての気配りができる。そして、これまでの店長たちが一番大事にしてきた「アットホームさ」。そこに、これからの時代に必須なSNSでのコミュニケーションの力を掛け合わせて、改めて、お客さまとのつながりをつくっていけるサロンへ。
原点にプラスの価値をつけて、僕たちのH[eitf]をつくっていきます。
やるからには、目指すのは「一番」。
H[eiff]はH.companyの本店ですから、「できて当たり前」のハードルは高い。だからこそ、その期待を越えて、「さすがだね」と認めてもらえるサロンを、作ります。
1993年生まれ / 勤続年数7年 / 宮城県出身 / 仙台理容美容専門学校卒
Instagram:@tatsu0801
WhyH? 前回のインタビューはこちら